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主に無線LANや認証連携などの技術についてまとめるブログです。ネコは見る専。

書評:「無線LAN技術 最強の指南書」(日経BP)

[2021/5/27追記] この本には、後継とも言える新しい本があります。
書評:「これ1冊で丸わかり 完全図解 無線LAN入門」(日経BP) - hgot07 Hotspot Blog

 

無線LAN」とタイトルに含まれる本は数多あれど、初心者向けの、価値があるのかすら分からないレベルのものばかり目につきます。ホテルはだいたい無線LAN完備になり、カフェなどの店舗でもフリーWi-Fiが提供され、大学のキャンパス無線LANの導入・運用に携わる人々も少なくない昨今、無線LANシステムの構築側のノウハウが重要なはずですが、その点についてまとめられた本は、なかなか見当たらないのです。

たまたま見かけた拾い物ですが、いい感じの本があったので、紹介します。(ムック本なのでおそらく再販されず、物理本が高騰しているので、気を付けて。定価2,400円(税抜)ですよ)

 

無線LAN技術 最強の指南書

無線LAN技術 最強の指南書

  • 発売日: 2019/10/03
  • メディア: Kindle
 

 

# えっと……、「最強の指南書」 なんて書かれたら、かえって胡散臭いから、スルーするところだったじゃないですか。

 

第1部と第2部は、他にもありがちな解説なのですが、無線LAN構築に携わる人なら手元に置いて損はない内容でしょう。特に、「11axなんて高速性で盛り上がっているけど、チャネルボンディングで運用しにくい大規模システムでは速度出せないし、無意味なんじゃないの」とか斜に構えている人は、知識のアップデートをした方がいいです。

公衆無線LANの認証方式についても、うまくまとめられています。ただし、EAPや、特にPEAP周りの説明がちょっと怪しいので、他の文献で補足した方がよいです。

さて、私は以前、こんな記事を書きました。

hgot07.hatenablog.com

技術に詳しい人ならば、原因が分かったらその逆を探って、システムを改善することができるでしょう。ただ、ある程度の現場経験がある人でも、問題解決の糸口が分からないとか、話ばかりでデータがないじゃないか!ということはあると思います。今回紹介した本は、そういうことに応えられるものだと思います。

第3部は、無線LANシステムの構築の話です。サイトサーベイの方法も書かれているので、大規模システム構築の実践に役立つでしょう

個人的に、本書で最も価値があると思ったのは、第4部第1章「試してわかった!無線LANの素朴な疑問」です。無線LANの仕組み上、おそらくこうなるんだろうなぁとぼんやり頭で考えていたことが、実機やシミュレータを用いて得られた実験データによって裏付け、および、解説されています。想像した通りの挙動もあれば、新たな発見もあるでしょう。

ただ欲を言わせてもらえば、どの調査項目も「そこもうちょっと掘り下げてよ!」という感じがあり、満足度8割といったところです。あぁ、その先は自分でやれってことですね、ハイ……。

測定ツールの具体的な使い方については書かれていません。というか、本職の人が使う高価なものばかりで……orz

一般的なスタジアムでは、1APあたり300~500席をカバーしているところ、楽天生命パーク宮城では120席に1APという高密度にしているという話は、具体的な数値を初めて知りました。現行システムの前は、ビームフォーミング型の基地局を導入して、キャパシティ不足で失敗したんですよね、たしか。

 

おわり