書店で見かけて「あれ、色が違う。改訂版かな?」と思ったら、タイトルが微妙に違っていました。前回レビューしたのは「入門」で、今回は「技術」です。
前回の記事はこちら ↓
入門編から技術の詳細に一歩踏み込んだ内容の本かと思った?残念!
後半は内容が重複しています。
一言で評するなら、
- システム構築に振った内容
- 新規部分が少ないうえに内容が表面的
- ちぐはぐな構成
あれ、三つある……
重複部分
第3部「無線LANの素朴な疑問」は、「入門」の第4部 第1章「試してわかった!無線LANの素朴ない疑問」とほぼ同じです。元記事が同じ。実際の計測データに基づいた解説には好感が持てます。
第4部「イラストで学ぶ無線LANの基本」は、「入門」の第1部 第1章「イラストで学ぶ無線LANのき・ほ・ん」と同じです。「入門」の第2章「令和時代の無線LAN」は、将来的なことの記述が多かったのですが、別記事に分散・吸収されたようです。
新規部分
「入門」の第5部「無線LANの構築方法を学ぶ」の元記事が古かった (2015, 2016年) ため、「技術」の第1部に置き換えられたようです。企業の無線LANシステム構築という切り口で、設計の注意点と、トラブルシューティングの方針が説明されています。
第1部 第6章「ネットワーク管理に使えるソフト」は、実践的な最近のツールが紹介されている点が良いです。
第1部は、全体的にふわっとしていて、技術の詳細が少ないです。この部分こそ書籍タイトルの「技術」のウリでしょうに、少し残念でした。
あと、第1部 第7章「ネットワーク機器 利用実態調査2021」は、「技術」ではないし、あまり参考にならないかなと。
「入門」にあった記事は、古いとはいえ、現在でも通用することが含まれていました。最近の規格と環境でアップデートされたものがあれば、まさに「技術」編に相応しいレベルだったのではないかと、この点が残念です。
第2部「5Gと高速無線技術」は、内容がちぐはぐに見えます。無線LANに限らず、様々な無線ネットワークの最新動向を俯瞰するという構成に見えますが、本書のタイトルは「無線LAN」なので、5Gのセルラー網の話に終始するのは場違いな印象を受けます。このタイトルに低速なLPWAの解説が含まれるのも、収まりが悪いです。
本書の主題は無線LANなのだから、5Gを取り上げるならば、セルラー網とWi-Fi 6/6E/7がどのように棲み分け、連携していくのかといった解説が欲しかったです。
SIM認証を用いた無線LANローミングや、RAN (Radio Access Network) コンバージェンス、あと日本ではサービスがないのですがWi-Fi Callingなど、2020年時点でも既に話題になっていたわけですが、元記事がなかったのかなと。
お奨め度
企業や学校の無線LANシステムの構築について、実践的な技術への入口を知りたい人には、お奨めできると思います。とりあえずキーワードだけは拾えるので、詳細はネット検索で別の記事へという割り切りが必要です。
既に「入門」が手元にある人は、第1部に価値を見出せるかどうかでしょう。
新しい情報が充実している方がよいというのは、その通りです。入口のキーワードが重要ですから。
おしまい