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公衆無線LANにおけるWi-Fi 6E、WPA3に泣く

2022年9月2日、日本国内でも無線LANの6GHz帯の一部が開放され、Wi-Fi 6Eの利用が解禁になりました。

www.itmedia.co.jp

そわそわしている人がそこそこいると思います。学校・大学などのキャンパス無線LANや、公衆無線LANでも、積極的に導入すべきものでしょうか?

バンド幅以外のWi-Fi 6Eの目玉の一つ(?)は、WPA3必須化でしょう。Wi-Fi 6の5GHz帯でもWPA3は利用できましたが、6GHz帯ではWPA3が"必須"となっています。

ところが、家庭内乱^H LANと違って、大勢が利用する無線LANシステムでは、色々と困ったことが出てきてしまいました。とある国際リナカフェの業界人が話していたことをこっそり披露します。

結論から書くと、「公衆無線LANでは6GHz帯を別扱いするしかなさそう」ということです。

 

要点

WPA2/3 Enterpriseを使う無線LANシステムを想定します。

要点をざっくりと書きだしてみると、こんな感じです。

  • WPA2以前に脆弱性KRACKsが見つかったので、ガチな対策が含まれたWPA3が出てきた。ただし、WPA2の実装にも攻撃を緩和するパッチが出ている。
  • 2.4GHz帯と5GHz帯では、WPA2 Enterpriseが広く長く使われてきた
  • 無線の状況が変化したときにバンド間で自動切換が可能な、バンドステアリングという技術があるIEEE 802.11r (Fast Basic Service Set (BSS) Transition) が有効ならば、切替時に認証処理をスキップして、通信断の時間を短縮できる。
  • Wi-Fi 6Eの6GHz帯では、WPA3が必須で、WPA2は使えない。
  • WPA2とWPA3の切り替えには、比較的長い通信断が伴う
  • WPA2への後方互換性がある(とされる) WPA3 Transition Mode (TM) というものが存在する。
  • 古めのOSや無線LANドライバは、Transition Modeに設定された基地局にうまく接続できないことがある。

ぇ、えー!?

 

どうする?

様々な端末が接続される公衆無線LANシステムでは、まったく接続できないというトラブルを嫌って、バンドステアリングさえオフにすることがあります。

しかし、バンドステアリングは魅力的です。最近の端末なら利用できるので、公衆無線LANでも有効にする流れでしょう

WPA3はまだまだ対応端末が少ないので、2.4GHz帯と5GHz帯で使ってしまうと、ほとんどの人が接続できない公衆無線LANシステムができあがります

 

6GHz帯もバンドステアリングの仲間に入れられるかどうかを考えてみます。通信断の時間を短縮するには、すべてのバンドでWPA3が使えるようにするしかありません。

こんなこともあろうかと WPA3 Transition Modeを……(マテ

残念ながらWPA3 Transition Modeは鬼門で、使用する端末が限定的でない場合、これを使うのは避けた方がよいと言われています

はい、行き詰まりましたね_('、3」∠)_

それで、どうするのが現時点で無難かというと、「バンドステアリングを有効にしつつ、6GHz帯だけSSIDを分ける」しかないということになりそうです。確定した結論ではなくて、業界でもeduroam界隈でも、議論は現在進行形です。

あとは、

  • 全バンドでバンドステアリングやFast Transitionを諦めて、SSIDを共通化する。
  • どうせ5GHz帯同様に大して飛距離がないのだから6GHz帯に夢を見ない😇

といったところでしょうか。

 

Wi-Fi 6Eは要る?

既設のWi-Fi 6の基地局を早急に6Eに更新する必要性は、公衆無線LANの用途では無いと考えられます。そわそわしなくても大丈夫です。

基地局を新規導入するなら、数年後の状況に備えて、Wi-Fi 6Eに投資しておくのもよいでしょう。

SSIDを分けたり、端末を限定してでも、広帯域が欲しい」という用途なら、突っ込んでみたらよいのでは?(無責任)

 

おしまい